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研究の足跡
2007/12/7
 当社は、平成19年9月8日、日本食品科学工学会第54回大会(福岡市、中村学園大学)においてランチョンセミナーを開催しました。講師は、(独)農研機構 生物系特定産業技術研究支援センター 矢野昌充先生、演題は「温州ミカンのβ-クリプトキサンチン―調製技術開発と機能性研究の進展―」です。セミナーでは100席が満席となり、参加者は熱心に聴講されていました。以下に、セミナーの概要を紹介します。



 β-クリプトキサンチンは、ヒト血液中にも存在するカロテノイドの一つで、他のカロテノイドと同様に食物から摂取され、ヒトの健康維持に貢献していると考えられています。最近、温州ミカンを原料としてβ-クリプトキサンチンを精製する技術が開発されたことから、その機能性研究が進み、発がん抑制などの機能が明らかにされました。また、β-クリプトキサンチンの重要な供給源である温州ミカンも疫学研究の進展から、ヒトの健康増進への積極的な貢献が可能であると考えられるようになってきました。



 Tushimaらにより51種のカロテノイド類の発がんプロモーション抑制効力試験(細胞が発がん物質の作用で無秩序に増殖するのを抑制する効力を調べる試験)が行われ、β-クリプトキサンチンは最も強い抑制効力を示しました。西野らはこの結果に注目して、化学発がんモデル動物を用いて皮膚、大腸、肺に関わる5種類の実験を行い、β-クリプトキサンチンは発がんを抑制することを報告しています。
 また、Yamaguchiらは、骨組織培養系の実験から、β-クリプトキサンチンの骨形成促進と骨吸収抑制作用(骨が壊され、分解されること)を明らかにしました。ヒト試験においても、β-クリプトキサンチンを含有する温州ミカンジュースを飲用することで血清β-クリプトキサンチン濃度が増加し、それに伴い骨形成マーカー値(骨を作る時に必要な酵素や材料を測定した値)の上昇、骨吸収マーカー値(骨が壊れた時にできる物質を測定した値)の低下が認められています。Sugiuraらによる疫学研究のデータからもβ-クリプトキサンチンが健康な骨の維持、特に閉経に伴う骨密度低下の防止に役立つことが示唆されています。



 果樹研究所のSugiuraらは、温州ミカンの有数な産地の一つである静岡県三ケ日町の住民を調査対象とする疫学研究を実施しました。その結果、血清β-クリプトキサンチン高濃度群(別の研究からウンシュウミカンをよく食べていることが推測される)は、低濃度群に比べて様々な 健康事象で優れていることが明らかになりました。一例を挙げますと、@アルコール摂取による肝臓の損傷に対する保護効果、A高血糖が誘発する肝臓損傷に対する保護効果、B動脈硬化の予防効果、C血液中の糖濃度をコントロールするホルモンであるインスリンが効きにくい体質になること(糖尿病の誘引)の予防効果、などです。



 β-クリプトキサンチンを豊富に含む温州ミカンは永く国民に親しまれてきました。日本国民の健康増進に寄与してきたと考えられます。しかし、この30年間に温州ミカンの消費量は4分の1に激減したことは、残念なことです。これを機会に温州ミカンやβ-クリプトキサンチンが多くの人達の健康増進に活かされることを願っています。



カロテノイド
 カロテノイドは果物や野菜などに豊富に存在する一群の黄色、だいだい色、紅色色素の総称です。一種類の果物や野菜に数十種のカロテノイドが含まれています。動物は体内でカロテノイドを生成することができませんので、果物や野菜などから摂取する必要があります。体内に吸収されるカロテノイドは、β-カロテン、β-クリプトキサンチンなど10種類程度であり、血液や臓器などで重要な働きをしているといわれています。


β‐クリプトキサンチン
 温州ミカンのだいだい色は、温州ミカンに含まれるカロテノイド色素によるものです。温州ミカンの果肉(ミカンのつぶつぶ)には、30種類程度のカロテノイドが含まれており、その含量の50%以上はβ-クリプトキサンチンです。β-クリプトキサンチンを比較的高含有する食品には、柿、ビワ、赤ピーマン、パパイヤなどがありますが、温州ミカンほど日常生活で食べる機会が多いとはいえません。このように、温州ミカンは、β-クリプトキサンチンを摂取するための最有力食品といえます。



矢野先生の講演要旨がご覧になれます。
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